FCTメディア・リテラシー研究所 Japan Media Literacy Research Institute
視聴率買収・日本の放送倫理はどうなっているのか
2003年10月25日の新聞各紙は、日本テレビ社員による視聴率買収事件を一斉に1面トップで報じている。興信所まで使ってビデオリサーチ(日本における唯一の視聴率調査会社)の調査対象世帯を割り出し、現金を渡して自分の制作したバラエティ番組の視聴率をあげようと画策したというのだから、卑劣きわまりない犯罪であり、私たち視聴者を徹底的にバカにする行為である。
しかも、放送の公共性などどこ吹く風のこうした行為が1年以上も前から続いてきたと聞くと、この事件は、日本テレビ1社にとどまらず、民放連、ひいてはNHKをふくむ日本放送界全体の放送倫理にかかわって、重大な問題を提起しているといわざるを得ない。
そもそも日本の放送界にはどのような倫理規範が存在するのか。なぜ、この問題にNHKまでがかかわっているのか。実は、公共の利益のために運営されるべきNHKが、商業的利益の追求を不可欠とする民間放送業界団体の民放連と協議し、同一の倫理綱領を制定すること自体が、諸外国の公共放送のあり方に照らしてみると、極めて特異なことである。しかし、現実には、この両者によって1996年9月に「…放送に期待されている使命を達成する決意を新たにするために」、自主的に「放送倫理基本綱領」が制定されている。
http://www.nab.or.jp/htm/ethics/idea.html) そういうわけで、日本のすべての放送メディアが自らの行為を律するために策定した最新の倫理規範がこの倫理基本綱領である。そうであるなら、英BBCがいうように「オーディアンスは放送に最高の編集基準と最高の倫理基準を期待する当然の権利をもつ」(本誌p7)と考える私たちとしては、まず、その内容を冷静に読んでみることにしよう。その上で、この程度の倫理綱領を掲げるだけでは、到底、今回の事件を防ぎ得ないことを確認したい。
いま必要なのは、この倫理綱領をより詳細に書き直し、さらに、それを実践して行くための「ガイドライン」を作成することである。なかでも、放送が民主主義の発達に資するために求められる放送に携わる者の職責(放送法の目的、第1章第1条3)については、さまざまに想定される具体的なケースに沿って項目を立て、方策や手続きを詳細に記述し、その遵守を厳しく求めていく必要がある。そうした積極的な態度を抜きに、「視聴者に信頼され、愛されること」などあり得ないことを強調しておきたい。
−『fctGAZETTE』No.81(2003年11月)掲載−
横浜市中区新港2-2-1横浜ワールドポーターズ6階NPOスクエア内(〒231-0001)
Copyright©2006 Japan Media Literacy Research Institute. All rights reserved.